キャリア2026.09.03 公開読了 約5

建設業で男性育休を取得した人の実態とキャリアへの影響

現場を動かす施工管理や技術職の男性が育休を取るとき、何が起き、どう乗り越えているのか。工程管理・チーム体制・復帰後のキャリアへの影響まで、建設業界特有の事情を踏まえながら実態を読み解きます。転職を考えていない方にも役立つ職場環境の見極め方も紹介します。

建設業界では長らく「現場は休めない」という空気が根強く残ってきました。工期・工程・安全管理——どれも人が欠けると影響が出やすく、休暇取得そのものへのハードルが他業種より高いと感じている方も多いでしょう。

そうした環境のなかで、ここ数年じわじわと増えているのが男性の育児休業取得です。法整備が段階的に進み、企業側の意識も少しずつ変わりつつある今、建設業界の現場で実際に育休を取得した男性はどのような経験をしているのか。現場を知る目線で掘り下げてみます。


建設業界で男性育休が増えにくかった背景

建設業界特有の構造として、工期と人員配置がほぼ連動していることが挙げられます。現場の所長や主任技術者が長期離脱すると、監理体制そのものが揺らぎかねない。これは人手不足が慢性化している中小の専門工事会社ほど顕著です。

また、ゼネコン・サブコン・ハウスメーカーなど業態によって事情は大きく異なります。大手ゼネコンでは代替要員の確保や引き継ぎ体制の整備が比較的進んでいる一方、中堅以下の会社では「自分がいなければ現場が止まる」という状況が実態としてあります。

さらに施工管理職は担当現場への帰属意識が強く、「途中で抜けたくない」と本人が自制するケースも少なくありません。義務感や責任感が、制度の利用を無意識に阻んでいることがあるのです。


実際に取得した人はどう動いたか

育休取得を実現した男性に共通する要素として、取得の意思を早期に上司・現場に伝えることがあります。出生予定の半年以上前から上長と相談し、担当現場のフェーズが一段落するタイミングを逆算して取得期間を設計するケースが多いようです。

具体的には次のような形が見られます。

  • 工程の切れ目を狙う
    躯体工事が完了し、内装工事に移行する前後など、比較的引き継ぎコストが低いフェーズに取得時期を合わせる。

  • 短期分割取得を選ぶ
    1〜2週間の取得を複数回に分散させることで、現場への影響を最小化する。制度上は分割取得も認められているため、長期一括が難しい場合の現実的な選択肢になっている。

  • 副所長・若手への権限移譲を先行させる
    育休前の数ヶ月で意図的に副所長や後任候補に現場判断の機会を増やし、属人化を解消してから離脱する。

大手ゼネコンでは人事部門が取得計画をサポートする仕組みが整いつつあり、事務手続きや代替要員のマッチングが組織的に行われるようになっています。一方、専門工事会社では当事者と直属の上司が二人三脚で段取りを組むことが多く、上司の理解と裁量が取得可否を大きく左右します。


「現場を離れる」ことへの不安とその実際

育休取得を前にした男性から最も多く聞かれる不安が、「復帰後に現場を失っているのでは」「評価に響くのでは」という懸念です。

この点については、業態・会社規模・上長の考え方によって差が出るのが正直なところです。ただ、取得経験者の声を総合すると、復帰後に明確に不利になったと感じるケースよりも、「想定より普通に戻れた」と感じるケースの方が多いと言われています。

理由の一つは、工期ベースで動く建設業では「あのプロジェクト」が終わればリセットされやすい構造にあること。育休前に担当していた現場が竣工していれば、次のアサインは基本的にゼロベースで行われます。そのため「いなかった空白」よりも「復帰後に何ができるか」が評価の軸になりやすいのです。

一方で注意が必要なのは、育休中に資格更新・講習の受講期限が重なるケースです。施工管理技士の監理技術者証や各種法定講習は有効期限があるため、取得前に確認しておくことが欠かせません。制度や要件は改正されることがあるため、最新情報は必ず公的な機関や資格発行元で確認してください。


育休を取得した後、キャリアはどう変わったか

復帰後のキャリアに関して、育休取得が「プラスに働いた」と感じる経験者は少なくありません。具体的には次のような変化が聞かれます。

マネジメントの視点が変わった
育休中に家庭という「チームのマネジメント」を経験することで、メンバーのコンディションや家庭事情に対する感度が上がったという声があります。部下が制度を使いたいと申し出たときに動じなくなった、という現場監督も増えています。

後輩の育成スピードが上がった
育休前に権限移譲を意識した結果、復帰後も「教える・任せる」習慣が定着し、チームの底上げにつながったというパターンも見られます。

会社選びの基準が明確になった
育休取得を経験することで、自社の制度・文化・上長の姿勢をリアルに評価できるようになります。「取れた会社」に留まる動機になることもあれば、「取れたけれど居づらかった」という経験が転職を検討するきっかけになることもあります。


会社・業態を選ぶときに見ておきたいポイント

育休取得の可否は、制度の有無だけでなく「運用できているか」が重要です。転職先や現職を判断するうえで、以下の視点を持っておくと役立ちます。

1. 男性育休取得実績があるか
求人票や会社説明会で「取得実績がある」と明示している会社は、少なくとも前例が存在します。一方で実績がゼロの会社では、あなたが最初の取得者になる可能性があり、社内調整のコストが格段に高くなります。

2. 現場の人員に余裕があるか
施工管理の担当現場数・一人当たりの管理棟数は、育休取得の現実的な難易度に直結します。複数の現場を一人で抱えているか、フォローできる体制があるかは、入社前に確認できる点です。

3. 上長・現場所長の姿勢
制度があっても、直属の上長が「取るのは難しい」と暗に示す文化であれば、実質的に利用できません。面接の場で職場の雰囲気を確認すること、内定後に職場訪問を打診することも一つの手です。

4. ゼネコン・ハウスメーカー・専門工事会社の違いを把握する
大手ゼネコンやハウスメーカーは人事機能が充実しており、育休取得のサポート体制が組織化されている傾向があります。対して中堅・中小の専門工事会社は現場の裁量が大きく、個々の現場環境に依存します。一概にどちらが良いとは言えませんが、自分が置かれる状況を具体的にイメージすることが大切です。


まとめ

建設業界の男性育休は、「取れない業界」から「取れる人が少しずつ増えている業界」へと変化の途上にあります。取得の成否を分けるのは、制度の有無よりも事前の段取りと社内のコミュニケーションであることが多く、工程管理に慣れた施工管理の技術者ほど、その段取りを上手に設計できるという側面もあります。

育休取得がキャリアに与える影響は、復帰後の行動と職場の文化によって大きく変わります。不安を抱えて黙って諦めるより、取得実績のある先輩に話を聞く、制度の確認を人事に打診する——そうした小さな一歩が、職場環境を変えるきっかけにもなり得ます。

転職を検討している方であれば、育休取得のしやすさを会社選びの一つの軸として持っておくことを推奨します。現場に根ざした働き方の変化を、自分自身のキャリア設計に活かしていきましょう。

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本記事は建設タレントサーチ編集部が作成しています。制度・法令は改定されることがあるため、 最新の内容は官公庁の公表資料をご確認ください。

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